@misc{oai:sucra.repo.nii.ac.jp:00010267, author = {河野, 仁志}, month = {}, note = {われわれをとりまく環境には様々なガス状汚染物質が存在し、生活環境に種々の影響を与えている。その中でも、揮発性有機化合物(以下VOC と略す) については大気に放出されたものそのもの、あるいは、それが介在して生じる光化学オキシダントが人体の健康に被害を与える危険性があり、近年、国内外で排出量削減について議論され、総排出量規制の法制化が始まっている。また、大都市部における大気中へのVOC発生源を考えた場合、移動発生源である自動車排ガスの寄与も大きく、同時に排出される窒素酸化物による汚染も深刻である。これらVOCや窒素酸化物を処理するために、高濃度用には加熱触媒酸化や熱分解が、低濃度用には薬液吸収、物理吸着、化学吸着などの技術が実用化されてきているが、中低濃度において吸着法はその吸着容量が限られているために頻繁な交換が必要であるということ、吸収法は吸収剤の後処理が必要なことが問題点として指摘できる。 本研究では、従来の除去技術では除去効率の悪い、外気、作業環境あるいは低濃度の排気ガス中に含まれる数百ppb~ 数百ppmの濃度範囲における新しい除去技術として、非熱平衡放電プラズマやUV光照射あるいは光触媒により生成した反応活性種と吸着材を利用したベンチスケールの処理システムを製作し、実験的研究からその基礎特性を把握し、それぞれの方式の適用分野を明確にし、実用化のためのシステムを検討することを目的としている。 以下に各方式の結果とまとめをそれぞれ示す。 (1)非熱平衡放電プラズマによるガス除去 非熱平衡放電プラズマの方式には、パルスコロナ放電、強誘電体パックドベッド放電、キャピラリー管直流放電、およびキャピラリー管交流放電の4種類を採用し、それぞれの反応器の特性を比較することも目的とした。処理対象ガスは作業環境あるいは排気ガス濃度にかかる比較的高濃度(数十~数百ppm)のトルエンまたはキシレン、およびトリクロロエチレン(以下TCEと略す) とした。VOC濃度200ppmで流量lL/minのガス除去率はパルスコロナ放電(滞留時間2.5s) 、パックドベッド放電(滞留時間1.1s) ではほぼ100%の除去率が得られ、キャピラリー管方式ではDCタイプ(滞留時間6.1ms)、ACタイプ(滞留時間170ms)共に80%の除去率が得られた。エネルギー効率(ここでは、単位投入エネルギー当たりの除去VO C量と定義) は反応器の方式や運転条件により若干異なるが、3~9g/kWhの範囲に入り、特徴として除去率を向上させる条件(印加電圧を大きくする、処理流量を少なくする) では値が小さくなる傾向にあることが分かった。二次生成物としてCO2、H2O、CO、O2、N2O、HN O3が検出され、トルエン、キシレンからは数百個/cm3程度の粒子状物質(>0.3μm)が、TCEからは微量のCOCl2が特徴的に検出された。また、DCタイプのキャピラリー管方式ではO3、N2O、HNO3は検出されずNO2が検出された。有害な二次生成物の中では、COを除くガスはプラズマ反応器の後段に接続した活性炭ファルタにより除去できた。これらの結果から、非熱平衡放電プラズマ技術の一つの応用として、後段に二次生成物処理のための吸着材とエアフィルタを設けた低濃度の排気処理システムが考えられる。実用化のためには、さらに微量の二次生成物の定性的かつ定量的分析による、処理後のガスの安全性評価が必要となろう。 (2)波長184.9nmUV光照射によるガスの微粒子化除去 UV光源には2537rlnと184.9nmを出力波長に含む低圧水銀ランプを用いた)。処理対象ガスは、大都市部の環境汚染の進行した外気に対応させて、数ppm程度のNOとVOCを含んだ空気とした。まず予備実験で、NOシクロヘキセン-空気系の実験により、184.9nmUV光の照射による反応がオゾンとの気相反応、あるいはオゾンと253.7nmのUV 光照射との組み合わせた反応系と比較して粒子化の点で非常に優位であることを確認した。流量5L/min (滞留時間約5min) のとき、NO2除去率は80%以上、シクロヘキセン除去率は100%で、0.2/μmにモードを持つ粒子の生成が確認できた。次にNO BTX 空気系(ここでBT Xはベンセン、トルエンまたはキシレンを示す) での比較実験により、BTX間の除去率は各BT XのOHラジカルとの反応速度定数に依存し、また、NOX除去率はBTXが存在することにより若干低下し、その低下する割合はベンゼン< トルエン<キシレンの順序であることが示された。 これらはOHラジカルに対してNOxとBTXが競争反応を起こしていることが原因と考えられる。このことから、処理対象物質のOHラジカルとの反応速度定数がわかればおおよその除去率が予測可能であることがわかった。さらに、NO-ベンゼン-空気系で後段に複合金属酸化物オゾン分解触媒を設置した実験から、低湿度時は触媒が吸着材として作用し、NOx除去率95%、ベンゼン除去率80%に達し、温度40%RH時はOHラジカルとの微粒子化反応が促進され、NOx除去率95%、ベンゼン除去率90 %となった。このように184.9nmUV光照射と複合金属酸化物触媒を組み合わせることにより、広範囲な湿度に対してNOx、VOCいずれの除去率も高い空気浄化システムの可能性が示された。UV光強度の大きいランプ近傍に処理ガスを有効に流すことによりさらなる除去率の向上が期待できる。 (3) 光触媒と波長253.7nmUV光照射によるガス除去 光触媒(二酸化チタン) と波長253.7nmを有するUV光照射によりクリーンルームや一般居室における低濃度(1ppm以下) のVOCガスを含んだ空気を処理対象とした実験を実施した。トルエン-空気系の実験により、トルエン濃度400ppb、滞留時間7minのときトルエン除去率95%が得られた。初期トルエン濃度が高いほど、また、流量が高いほど除去率は低下するが照射ランプ本数を増やすことで、低下の程度を抑制できることが分かった。また、ベンゼン空気系での実験においても除去率は90%に達した。これらの実験で、オゾンや粒子の発生は見られなかったことから、反応時間が十分確保できる密閉空間なとの場合、媒体の空気からの二次生成物の発生がない本方式の利用が有効であると考えられる。 反応活性種および吸着材を用いた3方式のガス除去技術について、基本的な特性(除去率と主な二次生成物の定性的分析) を把握し、それぞれの方式に適した対象ガスの適用濃度範囲、適用分野が提案できた。今後、これらの技術の実用化のためには、反応活性種により生じる二次生成物の詳細な分析評価と、二次生成物除去のために補完的に作用する吸着材の寿命についての長期的データの取得が重要であると思われる。, 主指導教官 : 坂本和彦, text, application/pdf}, title = {空気中気相汚染物質の反応活性種および吸着材を用いた除去}, year = {1997}, yomi = {コウノ, ヒトシ} }