@phdthesis{oai:sucra.repo.nii.ac.jp:00010301, author = {宮戸, 真美}, month = {}, note = {外生殖器は生物にとって、効率的な交配による体内受精を成し遂げるために必須な器官である。生物が様々な環境に適応して種を維持する過程で、外生殖器の形態を多様化させてきたものと推測される。しかし、これまで外生殖器の発生過程における研究についての報告例は少ない。この約15年の間に、遺伝子改変マウスを用いた解析から、外生殖器の発生過程が分子レベルで解明されつつあるが、他の動物種との比較解析が行われておらず、マウスに限定された分子メカニズムである可能性を否定できていない。そのため、多様な形態をもつ雄性外生殖器の形態形成について、生物種を越えて共通して働く分子メカニズムを解明するためには、げっ歯目を用いた解析だけでは不十分である。したがって、げっ歯目以外の動物の外生殖器を解析することにより、初めて哺乳類の雄性外生殖器の形態形成におけるメカニズムの共通性を明らかにし、種特異的な部分を特定することが可能になると考えられる。 本研究では、哺乳類に共通した雄性生殖器の形成・発育の分子基盤と疾患発症におけるその破綻について解明することを目的とし、雄性外生殖器形成に関わる段階を男性ホルモン非依存的ステージと依存的ステージに分けて遺伝子発現解析および形態学的解析を試みた。前半では、マウスにおいてすでに関与が報告されている遺伝子群を手がかりにして、スンクス外生殖器原基における遺伝子局在を検討し、後半では、ヒト先天性疾患から変異が同定された遺伝子の男性ホルモン産生における役割について、遺伝子改変マウスを用いて解析を行った。 マウス外生殖器原基の伸長過程で機能していることが報告されているFgf8遺伝子と、尿道形成過程で機能していることが報告されているShh遺伝子について、スンクス外生殖器原基における発現領域を調べ、外生殖器原基の発生過程における細胞増殖因子群の役割について解析した。その結果、スンクス外生殖器原基におけるこれら遺伝子の発現様式とマウスで報告されている遺伝子の発現様式は極めて類似していることが明らかになった。このことから、マウスとスンクスで共通した複数の遺伝子は、生物種を超えて外生殖器原基の形態形成を制御していることが推測される。続いて、成獣スンクスの雄性外生殖器について形態学的に詳細な解析を行った。その結果、スンクス雄性外生殖器の背側には骨格筋が存在すること、これまでスンクスのように骨格筋が陰茎内を通っている生物種の報告はないこと、陰茎は角化した数多くのとげで覆われていることを見出した。外生殖器におけるこれら形態学的特徴から、その形成には男性ホルモンの関与が示唆される。 つぎに、男性ホルモンの雄性外生殖器における役割に着目して研究を行った。従来の研究から、胎生期において男性ホルモンは外生殖器原基の形態の雌雄差および尿道形成に関与することが推測されており、男性ホルモン産生量および分泌量の減少は外生殖器の女性化や尿道形成異常(尿道下裂)を引き起こすと考えられている。Mastermind-like domain containing 1(MAMLD1)は、ヒトにおいて尿道下裂責任遺伝子として発見された遺伝子である。MAMLD1変異が尿道下裂を招く機序は不明であり、MAMLD1の生体内機能はわかっていない。我々は、胎生中期から後期のマウス胎仔精巣でMamld1遺伝子のmRNA発現量が経時的に増加することを見出し、この発現量の上昇が男性ホルモン合成増加と一致することを明らかにした。そこで、Mamld1遺伝子欠損マウスを作製し、胎生期精巣のステロイドホルモン産生におけるMamld1の役割の解明を試みた。その結果、Mamld1遺伝子欠損マウスの胎仔精巣において、ライディッヒ細胞特異的に発現する遺伝子(Cyp17a1、Hsd3b1など)のmRNA発現量が有意に低下していることを明らかにした。しかし、Mamld1遺伝子欠損マウスの胎仔精巣の形態および胎仔精巣内のテストステロン量は野生型マウスと比べて違いがなく、Mamld1遺伝子欠損マウスは尿道下裂を示さなかった。ただし、これまでに培養細胞を用いたノックダウン実験の解析から、Mamld1遺伝子の発現低下は男性ホルモン産生細胞においてストステロン産生量の減少とホルモン産生関連酵素であるCyp17a1遺伝子の発現量低下を招くことを明らかにしている。以上の結果を総合すると、MAMLD1/Mamld1は、マウスやヒトに共通して、胎生期精巣におけるライディッヒ細胞特異的に発現する遺伝子の発現調節を介して、ステロイドホルモン産生に関与することが推測される。 本研究により、男性ホルモン非依存的な時期では、Fgf8やShhなどのサイトカインがマウスおよびスンクスの外生殖器原基の発生過程に共通して機能していることが示唆される。さらに、男性ホルモン依存的な時期では、Mamld1が胎生期精巣において男性ホルモン産生酵素遺伝子群の発現を制御することを見出し、男性ホルモン産生に関与する新たな分子機構が明らかになった。, 【目次】・・・・・1 【序論】・・・・・4 【第一章】 男性ホルモン非依存的ステージでの外生殖器形成メカニズムの解明・・・・・10 - スンクス外生殖器原基の発生過程および成獣外生殖器形態の解析- <諸言> ・・・・・11 <材料と方法> ・・・・・14 動物の飼育と交配・・・・・14 器官およびスンクス胚の採取・・・・・14 器官およびスンクス胚の処理・・・・・14 解剖学的解析・・・・・15 組織学的解析・・・・・15 免疫組織化学・・・・・16 電子顕微鏡解析・・・・・17 ジゴキシゲニン標識リボプローブの作製・・・・・17 ホールマウントin situ hybridization ・・・・・18 <結果> ・・・・・20 1. スンクス外生殖器原基の発生過程・・・・・20 2. スンクス雄性外生殖器の解剖学的解析・・・・・21 3. スンクス雄性外生殖器の組織学的解析・・・・・22 <考察> ・・・・・24 【第二章】 男性ホルモン依存的ステージでの外生殖器形成メカニズムの解明・・・・・29 - Mamld1遺伝子欠損マウスの表現型解析- <諸言> ・・・・・30 <材料と方法> ・・・・・32 Mamld1遺伝子欠損マウスの作製・・・・・32 動物の飼育と交配・・・・・32 器官およびマウス胚の採取・・・・・33 器官およびマウス胚の処理・・・・・33 解剖学的解析・・・・・34 組織学的解析・・・・・34 免疫組織化学・・・・・35 リアルタイムRT-PCR ・・・・・36 ウエスタンブロット・・・・・37 胎仔精巣内のステロイド代謝産物含有量の測定・・・・・38 ジゴキシゲニン標識リボプローブの作製・・・・・38 ホールマウントin situ hybridization ・・・・・39 統計学的解析・・・・・40 <結果> ・・・・・41 1. Mamld1遺伝子のマウス胎仔精巣における発現解析・・・・・41 2. Mamld1遺伝子欠損雄マウスの作製・・・・・41 3. Mamld1遺伝子欠損マウスの胎仔精巣における遺伝子発現およびタンパク質発現・・・・・42 4. Mamld1遺伝子欠損マウスの外生殖器の解析・・・・・42 5. Mamld1遺伝子欠損マウスの内生殖器の解析・・・・・43 6. 交配実験・・・・・43 <考察> ・・・・・45 【総括】・・・・・51 【謝辞】・・・・・53 【参考文献】・・・・・54 【図】・・・・・67, text, application/pdf}, school = {埼玉大学}, title = {雄性生殖器の形成・発育の分子基盤と疾患発症におけるその破綻}, year = {2013}, yomi = {ミヤド, マミ} }