@phdthesis{oai:sucra.repo.nii.ac.jp:00010393, author = {田中, 尚志}, month = {}, note = {61p, 鉄硫黄(Fe-S)クラスターは無機硫黄原子と非ヘム鉄から成るコファクターで、このクラスターを持つタンパク質は総じてFe-Sタンパク質と呼ばれている。Fe-Sタンパク質の構造と機能は多種多彩で、TCA回路や電子伝達系などのエネルギー代謝から遺伝子の発現制御に至るまで、生命活動の根幹を担っている。これらFe-Sタンパク質の機能を支えているのがFe-Sクラスターの生合成系である。大腸菌は2種類のFe-Sクラスター生合成系(iscSUA-hscBA-fdx-iscXにコードされるISCマシナリーと、sufABCDSEにコードされるSUFマシナリー)を持っており、それぞれのマシナリーが独立してFe-Sクラスターを形成している。そのうちのISCマシナリーは7種類の成分から構成され、これらの成分が協調してクラスターを組み立て、最終的にアポ型タンパク質に渡していると考えられているが、具体的な作動機構はほとんどわかっていない。本研究では、クラスター形成反応におけるISCマシナリーの作動機構を明らかにすることを目的とし、まず、1)大腸菌を用いて新たな遺伝学的実験系を構築した。次に、2)sufABCDSEと個々のisc遺伝子をそれぞれ破壊した変異株を作製・解析し、ISCマシナリーの機能に必須の因子を同定した。さらに、3)マシナリーの中心成分であるIscUについて機能解析を進め、得られた知見に基づいてIscUの分子機構について考察した。 1. Fe-Sクラスター生合成系の解析を目的とした新たな遺伝学的実験系の構築 Fe-Sクラスター生合成系は生物の生存に必須であり、大腸菌においてもISCとSUFマシナリーの二重欠損は合成致死となる。しかし、私は大腸菌が持つ124種類のFe-Sタンパク質の働きを洗い直したところ、イソプレノイドの合成経路(MEP経路)で働く2つのFe-S酵素(IspGとIspH)のみが生育に必須であることに気が付いた。そこで、Fe-Sタンパク質が関与していない放線菌由来のイソプレノイド合成経路(MVA経路)の遺伝子群を大腸菌に導入したところ、ISCとSUFの二重欠損株が培地に添加したメバロン酸に依存して生育できることを見出した。これにより、Fe-Sクラスター生合成系のあらゆる遺伝子群を自在に操作・解析することが初めて可能になった。 2. sufオペロン欠損下における個々のisc遺伝子破壊による影響 大腸菌のイソプレノイド合成経路をメバロン酸経路に改変した上で、sufABCDSE(以下、単にsufと記す)と各isc遺伝子をそれぞれ個別に破壊した変異株をそれぞれ作製し、変異株の表現型を調べた。その結果、ΔiscXΔsuf株のみがメバロン酸の有無に関わらず生育可能であることが分かった。一方、嫌気条件下においては、ΔiscXΔsuf株に加えてΔiscAΔsuf株とΔfdxΔsuf株が培地に添加したメバロン酸に依存せずに生育することが分かった。したがって、好気条件下ではIscS, IscU, IscA, HscB, HscA, Fdxの6種類の成分がISCマシナリーの機能に必須だが、嫌気的な条件下では、IscS, IscU, HscB, HscAの4種類のみが必須であることがわかった。さらにΔhscAΔsuf、株とΔhscBΔsuf株から複数の偽復帰突然変異体を単離し、二次的なサプレッサー変異を調べたところ、それらすべてについてゲノム上のiscU遺伝子のコード域内にサプレッサー変異を同定した。in vitroにおいて、HscA/ HscB(シャペロン/コシャペロン)は協調してIscU(Fe-Sクラスターの新規形成部位)と結合し、次いでIscUの構造変化を引き起こすことにより、アポ型タンパク質へのクラスター移行反応を促進させることが示されている。今回の結果はin vivoにおけるIscUとHscA/ HscBの相互作用と、アポ型タンパク質にクラスターを渡す際のIscUの構造変化の重要性を示している。 3. Fe-Sクラスターの新規形成部位、IscUの機能解析 ISCマシナリーの中心成分は、Fe-Sクラスターの新規形成部位として機能するIscUである。すなわちIscUは鉄原子と硫黄原子を受け取り、それらをクラスターの形に組み立て、最終的にアポ型タンパク質へと渡しているが、具体的な反応機構についてはほとんどわかっていない。そこで上記の実験系を用いて、大腸菌IscUに対して系統的に部位特異的変異を導入し、相補実験により変異型IscUの機能を評価した。その結果、IscUのクラスター配位子(C37, C63, H105, C106)とY3, D39, K103がIscUの機能に必須であることが分かった。また機能不全の変異IscUから復帰突然変異体を単離し、二次的な変異を調べたところ、IscU Y3の変異をサプレスする変異を、IscS(硫黄原子の供与体)の活性部位近傍に4種類見出した。変異型IscUとサプレッサー変異型IscSを精製し、生化学的解析(Pull down/ Biolayer interferometory法による相互作用解析と、硫黄原子受け渡し活性の測定)を進めたところ、IscU Y3がIscSから硫黄原子を受け取る際の相互作用に重要であることを見出した。これらの結果は、IscU Y3がIscSの構造変化を誘起し、硫黄原子受け渡し反応を促進させる役割があることを示唆している。, 1. 要旨 p.4 2. 序論 p.6 3. 実験材料・実験方法 p.10 4. 結果 p.19 5. 考察 p.27 6. 参考文献 p.33 7. 図 p.39 8. 謝辞 p.61, 指導教員 : 髙橋康弘, text, application/pdf}, school = {埼玉大学}, title = {大腸菌における鉄硫黄クラスター生合成系の機能解析}, year = {2016}, yomi = {タナカ, ナオユキ} }