@phdthesis{oai:sucra.repo.nii.ac.jp:00018192, author = {久保田, 博志}, month = {}, note = {vi, 222p, 資源保有国が自国の資源について主権行使する代表的な手段として国有鉱山会社の設立があり、その活動や経営は当該国の経済発展過程に重大な影響を与えてきた。国有鉱山会社の多くは、1970年代初頭の資源価格高騰期に台頭し、1980年代以降の資源価格低迷期には経営破綻し、1990年代にその多くの資産が民営化された。その後、2000年代の新興国の資源需要の急増に伴う資源価格高騰を背景に再び活動を活発化したが、2011年頃からの資源価格の下落によって活動は低調なものに戻った。 このように国有鉱山会社は資源価格の変動等に翻弄されて繁栄と破綻を繰り返すのか、或いは、それらを乗り越えて持続的に事業活動を行うことが可能なのかを検討することは企業経営のみならず当該国の経済発展を考えるうえで大きな意義がある。 本研究では、1970年代からのザンビア共和国の銅産業国有化の流れのなかで、1980年代初頭に設立されて自ら鉱山経営に関与するも、その後の銅価格低迷期に経営破綻し、1990年代末にはその資産が民営化された国有鉱山会社ZCCM(Zambia Consolidated Copper Mines Limited)を対象として、その事業活動を生産拠点の操業段階まで踏み込んで分析する。本稿は、ZCCMの経営破綻の解明を目的とし、これを通じて国有鉱山会社の持続可能な事業の可能性、及びそのための要件とは何かこれらを探ることとした。 ザンビアの経済や銅産業に関する研究は、1960年代末から1970年代初頭にかけての銅産業国有化とそれに伴う諸問題、1980年代の経済の銅産業依存と経済破綻、1990年代末の銅国有資産の民営化に関するものなど少なくない。だが、その多くは経済政策やマクロ経済等との関連から論じたもので、国有鉱山会社の事業活動そのものの分析はなお端緒の域を出るものではないと考えられる。 ZCCMは、鉱山から製錬所の施設までを擁した巨大な企業体であり、その活動の全容を明らかにすることには多くの困難を伴う。本稿では、同社最大の銅生産規模を誇ったンチャンガ地区とそれに次ぐ規模のムフリラ地区に主たる分析の対象を限定した。 なお、資料の点では、ZCCMは1990年代末に民営化されたため当時のアニュアルレポート等の一次企業情報等を入手することは殆どできなかった。これが本研究を制約する大きな要因となった。そのため、本研究では、当時の業界専門誌等を主たる資料として活用し、これらに記載された断片的な諸事実や統計を抽出してZCCMの活動の実態、及びその全体像に接近した。 本研究では、まず、ザンビア銅産業の国有化の経緯とZCCM事業活動を概観し、ZCCMの事業活動における諸課題を提示した。続いて、ザンビアと同様に1970年代前後に銅産業を国有化した主要産銅国のチリとザイールの国営鉱山会社コデルコとジェカミンズ、及び当時、世界の銅産業界における代表的な民間企業であったフェルプスドッジ社等の北米主要産銅企業との比較を通してZCCMの事業活動に影響を与えた諸要因を整理した。次に、主要生産拠点であるンチャンガ地区とムフリラ地区を中心に活動の実態を把握し、ZCCMの事業に影響を与えた諸要因を分析し、そこから、ザンビア銅鉱山の国有化の破綻の原因と国有鉱山会社の役割と事業の持続性を検討した。 ンチャンガ地区とムフリラ地区では、最先端技術の導入、副産物や未利用資源の利用などによって各時期を通じて生産性向上のための努力が続けられ、低品位酸化鉱石からの低コストによる銅回収、コバルト回収による副産物収入による生産コストの削減など一部でその成果は表れていた。しかし、資機材の不足、技術者の不足、外貨不足と輸送障害などが阻害要因となって、多くの工程や生産拠点で施設の維持ができず、稼働率は上がらず、生産性、生産・輸出は低下した。特に、1970年代の輸送障害は、1960年代までの銅生産の好循環サイクルを悪循環サイクルへと転換させた。輸出収入の減少は、ZCCMの財務状況を悪化させ、政府がその債務を肩代わりしたことで財政は更に悪化した。特に、1980年代のIMFによる支援の条件でもあった通貨切下げは、短期的にはZCCMの現地通貨建ての収入の手助けとなったが、ZCCMと政府の対外債務を急増させた。 国有鉱山会社の持続可能な事業活動を確保するためには、銅価格低迷期にあっては人員や給与の削減、不採算部門や非中核事業の廃止・譲渡などの柔軟な対応が必要となる。しかし、政府と経営が一体化すると、雇用維持・地域経済振興等を図る政府と鉱山経営との間には利益相反が生じる。柔軟な経営には政府からは独立した機関がこれを行う体制が必要となるであろう。 1980年代半ばの銅価格低迷から経営危機に陥ったフェルプスドッジ社が、債務と支出の削減、資産の組み換えによる生産規模の維持、革新的技術(SX-EW法)の導入による低生産コスト化など一連の合理化によって銅価格低迷期においても利益を上げる企業体質に変わったことで、世界第二位の産銅企業になったこととは対照的である。国有鉱山会社は、民間企業とは異なり、利益追求以外にも、自国の資源からの富を確保する、産業を多角化する、雇用を創出・維持するなどの目的がある。これらの目的を達成するために、利益が出なくてもよい、財政支出によって補えばよいとの考え方もできるが、それでは持続可能な企業経営は行えない。資源価格は約10年をサイクルに高騰と下落を繰り返しており、価格高騰時には国有鉱山会社は鉱山を操業して輸出さえしていれば、収入は増加しても経営は維持でき、政府の税収も確保できるだろう。しかし、価格下落時には国有鉱山会社も企業としての経営努力をしなければ損失を出し、国有企業の配当や税金を主たる収入源としている財政は時に財政赤字となり、更に、国有企業を支えるための支援を行うことで国家財政も破綻の危機にさらされることになる。 国有企業であるが故の民間企業とは異なる目的があることは考慮しつつも、企業として持続可能な活動ができることが最優先されるべきであり、それができないのであれば自らが事業主体となるべきではないのであろう。国有鉱山会社にとって、所有者は最終的には国民であるから、国民に対して利益や成果を提供できる経営を行うことが最低限守るべきことと考える。そのためには民間企業と同様の経営努力、経営の柔軟性が不可欠であり、それには政府からの経営の独立性が重要になる。, 序章………1  第1節 研究の背景と目的………1  第2節 先行研究と論点整理………1  第3節 研究視点と方法………7  第4節 構成………8 第1章 ザンビア銅産業国有化とZCCMの事業概要………9  第1節 ザンビアにおける銅産業の位置づけ………9  第2節 ザンビア銅産業の変遷………10  第3節 ZCCMの主要生産拠点の事業概要………14  第4節 小括 ―ZCCMの事業における諸課題の整理―………21 第2章 ザンビア銅産業と主要産銅国等との比較………22  第1節 チリと国営企業コデルコ………22  第2節 ザイールと国営企業ジェカミンズ………40  第3節 北米主要産銅企業………57  第4節 小括 ―ZCCMの事業に影響を与えた諸要因の整理―………76 第3章 ザンビア銅産業の国有化とZCCMの事業の実態 ―ンチャンガ地区―………78  第1節 国有化前(1960年代まで)………78  第2節 一部国有化期(1970年代)………92  第3節 ZCCM設立期(1980年代)………108  第4節 その他地区………120  第5節 小括………124 第4章 ザンビア銅産業の国有化とZCCMの事業の実態 ―ムフリラ地区―………127  第1節 国有化前(1960年代まで)………127  第2節 一部国有化期(1970年代)………135  第3節 ZCCM期(1980年代)………149  第4節 小括………159 第5章 ZCCMの事業に影響を及ぼした諸要因の検討………161  第1節 鉱山自体に関する要因………161  第2節 鉱山を取り巻く環境に関する要因………191  第3節 小括………203 終章………206  第1節 総括………206  第2節 課題………214, 指導教員 : 伊藤孝, text, application/pdf}, school = {埼玉大学}, title = {ザンビア国有銅鉱山会社ZCCMの事業活動}, year = {2017}, yomi = {クボタ, ヒロシ} }