@phdthesis{oai:sucra.repo.nii.ac.jp:00018195, author = {湯田, 瑛樹}, month = {}, note = {113p, 鉄硫黄(Fe-S)タンパク質は、コファクターとしてFe-Sクラスターを持つタンパク質の総称で、エネルギー代謝から遺伝子の発現制御に至るまで、重要かつ多彩な生理機能を担っている。それらFe-Sタンパク質の機能を支えているのがFe-Sクラスターの生合成系である。Fe-Sクラスター生合成系のひとつSUFマシナリーは、大腸菌ではsufABCDSEオペロンにコードされており、これら6種の成分が協調してFe-Sクラスターを形成し、アポFe-Sタンパク質へ渡すと考えられている。このマシナリーのなかで、SufSとSufEは硫黄原子の供与体として機能している。SufB、SufC、SufDは、SufB1C2D1の複合体(SufBCD複合体)を形成し、この複合体でFe-Sクラスターが新規に形成されると考えられている。我々のグループでは最近、SufBCD複合体の結晶構造を決定したが、その構造からはFe-Sクラスターの形成部位や反応機構を推定することは困難であった。そこで本研究では、まずSufB、SufC、SufDに対して系統的な変異を導入し、in vivoにおける遺伝学的な解析から機能残基・機能領域を特定することにした。さらに、in vitroの生化学的な解析を組み合わせることによって、Fe-Sクラスター形成におけるSufBCD複合体の具体的な作動機構を明らかにすることを目指した。 SufCはABCトランスポーターのATPaseサブユニット(ABC-ATPase)と相同なタンパク質で、SufBとSufDのC末端ドメインにそれぞれ1分子ずつ結合している。SufCのアミノ酸配列にはABC-ATPaseにみられる重要なモチーフがよく保存されていることから、類似の作動機構、すなわちATPの結合と加水分解に共役してSufC二分子の会合と解離が起こるのではないかと予想した。そこで、SufCのWalker A モチーフ(SufCK40)、Walker B モチーフ(SufCE171)、H-モチーフ(SufCH203)に変異を導入したところ、いずれの場合もin vivo機能が消失し、またこれらの変異を導入したSufBCD複合体は、in vitroでATPase活性を示さなくなった。すなわち、Fe-Sクラスターの新規形成にはSufCのATPase活性が必要であることを明確にした。また、共同研究者によって、SufBCD複合体におけるSufC二分子が、ATPの存在下で実際に会合することが示されている。ABCトランスポーターとの類似性を考え合わせると、SufCはATPase活性を利用して二分子が会合し、それによってSufB、 SufDに大きな構造変化をもたらすという可能性が示唆された。 次に、SufBとSufDの機能残基・機能領域の同定を目的として系統的な変異導入実験を行った。鉄原子、硫黄原子、あるいはFe-Sクラスターを結合する可能性があり、かつ保存性の高いSufBの68残基とSufDの9残基のそれぞれを、部位特異的にアラニンに置換したところ、9種類の変異型で機能不全になった。SufBCD複合体の結晶構造において、これらの機能残基は2つの領域に分かれて分布しており、一方はSufBのβ-ヘリックスコアドメインN末端側(SufBR226、SufBN228、SufBC254、SufBQ285、SufBW287、SufBK303)に、他方はSufBとSufDの会合面(SufBC405、SufBE434、SufDH360)に集中していた。SufBとSufDの会合面にはFe-Sクラスターを結合しうる3残基の必須アミノ酸が集中していることから、この領域でFe-Sクラスターが新規に形成されると考えられる。ただし、結晶構造におけるこれら3残基の配置はFe-Sクラスターの結合には適していないため、構造変換が必要と考えられる。 SufSは基質のシステインから硫黄原子を引き抜いてpersulfide(-SSH)の形でSufEに渡し、SufEからさらにSufBCD複合体のSufBに渡されることが示されているが、SufBのどのアミノ酸が受け取るのかは特定されていない。そこで、機能不全となる変異を導入した8種類の変異型SufBCD複合体を精製し、SufSとSufEの精製標品とを組み合わせてin vitroでの相互作用を解析したところ、SufBC254に変異を導入した場合でのみ硫黄原子の転移活性が全く見られなくなった。したがって、SufEから硫黄原子を受け取るのはSufBC254であるということが明らかになった。 SufBC254は、β-ヘリックスコアドメインN末端側の機能領域に位置しており、Fe-Sクラスターの新規形成部位と予想されるSufBとSufDの会合面までは 25 Å 以上離れている。そこで、SufBCD複合体の結晶構造を精査したところ、SufBのβ-ヘリックスコアドメインの内部に、SufBC254からSufBC405までつながるトンネルを見出した。このトンネルを構成するアミノ酸残基は保存性の高いものが多く、なかでもSufBQ285とSufBK303は本研究で明らかにした機能残基である(上述)ことから、このトンネルの重要性が裏付けられた。 以上の知見を考え合わせて、SufBCD複合体の作動機構を次のように推定した。1)硫黄原子はSufEからSufBC254に渡される。2)この硫黄原子はおそらく還元されることによってSufBC254から遊離し、コアドメイン内部のトンネルを通ってSufBC405へと移動する。3)ATPの結合に共役してSufC二分子が会合し、SufBとSufDの会合面の構造が大きく変化する。4)その構造変化によって、会合面に位置するSufBC405、SufBE434、SufDH360が露出し、Fe-Sクラスターが新規に形成される。本研究ではこのように、SUFマシナリーにおけるFe-Sクラスターの生合成について、重要な反応機構を提唱した。, 略号 p.2 要旨 p.3 第1章 序論 p.6 第2章 SufBCD 複合体の in vivo 機能解析  2.1 序 p.17  2.2 材料と方法 p.21  2.3 結果 p.26  2.4 考察 p.35 第3章 in vitro におけるSufBCD 複合体と SufSE との相互作用の解析  3.1 序 p.42  3.2 材料と方法 p.45  3.3 結果 p.50  3.4 考察 p.54 参考文献 p.61 図と表 p.70 謝辞 p.113, 主指導教員 : 高橋康弘, text, application/pdf}, school = {埼玉大学}, title = {鉄硫黄クラスター生合成系SUFマシナリーにおける中核成分SufBCD複合体の機能解析}, year = {2017}, yomi = {ユダ, エイキ} }