@phdthesis{oai:sucra.repo.nii.ac.jp:00018525, author = {白岩, 誠史}, month = {}, note = {163p, 1999 年6 月に山陽新幹線福岡トンネル坑内において、剥落したコンクリート塊が新幹線を破損させるという事故が発生し、同年の10 月には山陽新幹線九州トンネル、12 月には室蘭本線礼文浜トンネルでも同様の事故が相次いだ。そのため、これまで化粧コンクリートと考えられていた覆工コンクリートの品質や安全性が社会問題となり、品質を確保するための努力が取り組まれてきた。特に養生においては、これまで打設翌日に脱型し、その後の養生を実施することがなった覆工コンクリートに対して、2006 年制定土木学会標準示方書[山岳工法編]・同解説では、坑口付近は、外気の影響を受けやすいため、ここでの覆工は明かり構造物と同じように養生を行う配慮が必要であるとしている。さらに、高速道路株式会社3社は、2015 年7 月にトンネル施工管理要領を改訂し、覆工コンクリートにおいても7 日間の湿潤養生を実施するように改訂した。この改訂に関しては、本研究の1 つの柱であるこれまで不可能であった覆工コンクリートへの給水養生を可能にしたアクアカーテンが、2011年に現場適用を開始したことが関係していることは言うまでもない。また、2014 年に国土交通省から通達された“道路トンネル点検定期要領”により定期的な調査が義務化された。土木学会全国大会へ投稿された覆工コンクリートの品質に関する論文は、2006 年は1 編のみであったが、2013 年には6 編、2016 年においても5 編となっており、現在もなお注目されるテーマとなっている。 覆工コンクリートの品質への注目が集まる中、特にトンネル坑口付近の覆工コンクリートは、鉄道および道路トンネルの調査結果から、ひび割れや剥落等の劣化が発生しやすい傾向にあることが報告されている。坑口付近の覆工コンクリートが劣化しやすい要因としては、以下の事項が挙げられる。 (ⅰ) コンクリートの温度収縮による体積変化が、インバートに拘束されて発生する外部拘束ひび割れ。 (ⅱ) 打設翌日の早期脱型および外気の湿度低下の影響による乾燥収縮ひび割れ。 (ⅲ) 冬期の凍結融解作用による雨掛り部分の剥離、剥落。 (ⅳ) 融雪剤の飛散による塩害に起因する鉄筋腐食ひび割れ。 以上の要因による劣化を抑制して、坑口付近の覆工コンクリートの耐久性を向上させるために、上記(ⅰ)に起因する外部拘束ひび割れ対策として、打設直後から実施する“部分パイプクーリング”、上記(ⅱ)~(ⅳ)に起因する乾燥収縮や塩害、凍害による品質低下対策として、型枠脱枠後に実施する“シート吸引方式給水養生システム(以下,アクアカーテン)”を開発した。 部分パイプクーリングは、インバートの拘束による外部拘束ひび割れの発生が懸念される部分のみを限定して短期間冷却することで、主に以下の2 つの作用により、材齢初期に発生する引張応力を低減し、外部拘束によるひび割れの発生を抑制する新しい発想に基づくパイプクーリング工法である。 (ⅰ)冷却期間を短期間とすることで、冷却停止後の再発熱およびまだ発熱の活発な周囲からの熱移動により、材齢2 日から3 日にかけて冷却部のみが遅れて再膨張する“冷却部の遅れ膨張効果”により引張応力が低減する。弾性係数が大きくなる時期の膨張であるため、引張応力の低減効果が大きい。 (ⅱ)コンクリートの内部温度が外気温まで降下する過程において、部材下部の冷却部は、温度降下量が少なく収縮量が小さくなるが、部材上部の未冷却部は、温度降下量が多く収縮量が大きくなるため、部材上部の未冷却部が冷却部を締め付ける“未冷却部の締付け効果”により引張応力が低減する。材齢 1 週から2 週にかけての弾性係数がさらに大きくなる時期の締付けであるため、引張応力の低減効果が大きい。 部分パイプクーリングは、国土交通省東北地方整備局発注の 2 車線道路トンネルである“国道115 号馬舘山トンネル工事”の厚さ450mm の覆工コンクリートにおいて検討し、試験施工を実施した。3 次元FEM 温度応力解析による検討から、無対策の場合の最小ひび割れ指数が1.0 未満となる下半部の高さ1m×延長6mの範囲を、直径25mm、延長5.5mの亜鉛メッキ鋼管を400mmピッチで3 段配置して、2.0 日間冷却することで、ひび割れ発生確率は37%改善することが確認できた。 現場導入時には、内部温度および拘束ひずみを測定し、さらに事後解析を実施して、その効果を確認した。その結果、実測値と事後解析値の温度および拘束ひずみは、概ね一致し、部分パイプクーリングを実施することで、ひび割れ発生確率を20%以上低減できたことが確認できた。施工後の1 年点検では、外部拘束によるひび割れは発生していなかった。 アクアカーテンは、特殊な養生シートとコンクリートの隙間の空気を吸引して、負圧とすることで、コンクリート表面にシートを密着させ、その隙間に養生水を流下させることで、これまで不可能であった鉛直面や覆工コンクリートのようなオーバーハングしたコンクリートの給水養生を可能とした世界初の工法である。まず室内試験において、給水養生の効果を確認した。その結果、2 週間の給水養生を実施することで、養生を実施しない場合(覆工コンクリートの打設翌日に脱型し、その後養生なしを想定)と比較して、圧縮強度が1.6 倍に増加、促進中性化深さは49%低減し、凍結融解試験による質量変化率は6.0%改善できることが確認できた。 現場においては、コンクリート表面の拘束ひずみや現場表層透気試験を実施して、効果を確認した。その結果、拘束ひずみが56μ低減、透気係数は翌日脱型しその後養生をしない場合と比較して、ランクが1つ向上することが確認できた。 研究の集大成として、国土交通省北陸地方整備局発注の2 車線道路トンネルである“神谷内トンネル(Ⅱ期線)工事”をモデル現場として、坑口付近の覆工コンクリートに、“部分パイプクーリング”と“アクアカーテン”の両技術を同時に適用した。実構造物および供試体において、ひずみや温度、透気試験を実施して、その効果を確認した。 部分パイプクーリングにおいては、部材内部のひずみおよび温度の測定結果から、冷却停止後の拘束ひずみの低減効果が確認できたとともに、膨張コンクリートとのひび割れ抑制効果の比較をし、部分パイプクーリングの方が、ひび割れ抑制効果が高いことが確認できた。また、実測値を反映した3 次元FEM 温度応力解析による事後解析では、ひび割れ発生確率を無対策の場合と比較して25%以上低減できたことが確認できた。 アクアカーテンにおいては、実構造物の透気係数が概ねランク2(良い)となり、コンクリート表面が密実に仕上がっていることが確認できた。また、供試体におけるひずみ測定の結果、表面の拘束ひずみが130μ程度低減できたことが確認できた。施工後の1 年点検では、ひび割れは発生していなかった。 本研究により、開発および効果の確認できた“部分パイプクーリング”および“アクアカーテン”を覆工コンクリートの坑口部分に適用することで、トンネル構造物全体の耐久性を向上できることが確認できた., 第1章 序論 1.1 開発の背景と目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1.2 本論文の構成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 1.3 覆工コンクリートの耐久性にかかわる劣化要因の種類・・・・・・・・・・・・ 4 1.4 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35 第2章 部分パイプクーリングによるインバート拘束に起因するひび割れ対策 2.1 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・39 2.2 既往の対策と課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40 2.3 3次元FEM 温度応力解析による検討 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 42 2.4 現場適用時のシステム検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・57 2.5 現場適用効果の確認・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60 2.6 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71 第3章 アクアカーテンによる表層の緻密化による耐久性向上対策 3.1 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・73 3.2 アクアカーテンの仕組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・75 3.3 室内試験による効果確認・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・76 3.4 現場適用時のシステム検討・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・95 3.5 現場適用効果の確認・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 101 3.6 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 108 第4章 モデル現場での適用状況 4.1 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 111 4.2 3次元FEM 温度応力解析による事前検討・・・・・・・・・・・・・・・・・ 112 4.3 現場適用時のシステム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 118 4.4 現場適用効果の確認(部分パイプクーリング)・・・・・・・・・・・・・・・120 4.5 現場適用効果の確認(アクアカーテン)・・・・・・・・・・・・・・・・・・129 4.6 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 135 第5章 結論 5.1 本研究の成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 138 5.2 まとめおよび今後の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 143 謝辞 参考資料1 トンネル用語 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 146 参考資料2 透気係数の評価についての一考察 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 157 参考資料3 膨張材の膨張特性とメカニズム・・・・・・・・・・・・・・・・・ 160, 指導教員 : 牧剛史准教授, text, application/pdf}, school = {埼玉大学}, title = {トンネル坑口部覆工コンクリートの耐久性向上を目指した施工技術の開発}, year = {2018}, yomi = {シライワ, セイシ} }