@phdthesis{oai:sucra.repo.nii.ac.jp:00018676, author = {似鳥, 利行}, month = {}, note = {vii, 100p, デジタル技術の進歩に伴い、映像コンテンツの制作と流通、消費の手段は増え、コンテンツの重要性も増している。しかしその制作を担う人材の育成のあり方についての議論は十分とはいえない。そこで本稿は、コンテンツ産業の中でキープレイヤーの一つである、在京民間地上波テレビ放送局(以下民放)と日本放送協会(以下 NHK)の人材育成の比較を通じて、映像制作者の育成に関する理解を深め、今後のための示唆を得ることを課題とする。 映像制作者の育成は、教育機関と職場訓練のあり方で分類することができる。欧米のように、映像制作に関する専門教育機関を経て、流動性の高い外部労働市場で訓練を積むやり方と、日本の地上波テレビのように、一般的な教育機関を経て流動性の低い内部労働市場で企業内訓練を積むやり方などがある。現在民放と NHK は、長期的に自前で育てたプロデューサーやディレクターなどが、外部の制作会社等を指揮する体制で主な番組を制作している。しかし通信産業の急速な発展を含めた多メディア多チャンネル化により、従来の収益性を維持できなくなってきており、番組制作体制も変容を迫られている。本稿ではこれら収益基盤の異なる組織における育成や制作体制を詳細に描くことにより、共通点と相違点、及び市場変化に伴う育成の変化を考察する。 記述の順序は、第 1 章で、映像コンテンツ制作者の人材育成に関する先行研究をサーベイする。第 1 節では人的資本理論に代表される企業内訓練に関する経済理論の整理を行う。第 2 節ではテレビ制作者に関する先行研究として、民放の企業内訓練に関する調査、プロフェッショナルとしてのテレビ制作者に関する調査、在阪テレビ局のプロデューサーの賃金プロファイルに関する調査を取り上げる。第 3 節では、日本の映画プロデューサーのキャリアに関する先行研究、欧米の映画、その他コンテンツ産業の育成に関する先行研究を整理する。第 4 節では文化経済学的アプローチを概観する。文化産業においては文化的価値と商業的価値にトレード・オフが不可避であり、アウトソーシングには質的な懸念がつきまとうことを示す。第 5 節では、クリエイティブ産業研究に基づき、放送事業と労働者の特性を整理する。放送事業は扱う財が経験財であることから、高度な不確実性を持ち、リスク分散が重要であること、労働者の芸術至上主義的性質から、コンフリクトが起こりやすく、時に組織化が困難になることを示す。 第 2 章では日本のテレビ放送事業の特性と現状を整理する。政府の参入規制で守られ広告収入を制作費に充てる民放モデルと、受信料で成り立つ NHK は、いずれもクリエイティブ産業に特有のリスクを低減しているが、通信産業の進展による競争環境の変化により、優位が揺らいでおり、変化への対応に迫られていることを示す。 第 3 章はテレビ番組の制作体制を詳述する。第 1 節では、民放が職能別階層組織を持ち、制作部門は切り離し可能な職能でありながら、それを維持していることを確認する。第 2~4 節では、放送局と制作会社との関係を取り上げる。アメリカとイギリスの放送局による、制作会社とのリスク分担のあり方と著作権との関係を取り上げ、日本はイギリス型の原価加算方式の契約で、著作権は全て放送局が持つことを示す。第 5~9 節では、映像制作の現場を具体的に説明する。民放及び NHK の制作体制を階層構造として捉え、より上位の熟練者が客観的な立場から修正を指示することにより、無限の多様性を持つクリエイティブ製品であるテレビ番組を、マスオーディエンスに対応し、より効果的な仕上がりにするための体制であることを指摘する。 第 4 章では、テレビ制作者の人材育成の事例を詳述する。第 1 節で、民放、NHK、番組制作会社それぞれに所属するプロデューサーやディレクター合計 7 人に聞き取り取材を行い、職務履歴を比較する。2 節、3 節で、民放、NHK ひとりずつの事例を挙げ、文献で補強しながら育成の実態を詳述し、4 節で、その違いと近年における変化を考察する。 第 5 章では、テレビ以外のコンテンツ産業に目を転じ、人材育成の今後を展望する上での指針とする。映画産業では、日本とハリウッドは共に、収益性が高かった時期には組織的に育成が行われていたが、外部環境の変化に伴い、アウトソーソングが進み、育成が行われなくなる。組織的な育成を行わなかったことが長きに渡る日本映画の衰退を招いたとの指摘を取り上げる。 以上の検討を経て、民放と NHK は共にマス視聴に適応した制作体制を持ち、育成面でも共通点を持つが、専門性の特化の仕方において相違が見られるという事実発見、及び NHKにおける近年の変化の可能性を指摘する。また放送局が自前で育成する制作人材が、文化的価値と経済的価値のトレード・オフの克服を目指しつつ、多様な外部のプロのコンフリクトを避け統括できる立場と技能を持つことが階層組織による体制の合理性に繋がっている可能性があるが、競争環境の変化によりその優位は失われつつあることを指摘する。, 図表リスト ................................................................... ⅵ 序論 .......................................................................... 1 第 1 章 映像制作者の育成に関する先行研究 ...................................... 4 はじめに .................................................................... 4 第 1 節 企業内訓練に関する経済理論の整理 .................................... 5 第 2 節 テレビ制作者の育成に関する先行研究 .................................. 8 第 3 節 映像コンテンツ制作者の育成に関する先行研究 ......................... 11 第 4 節 文化経済学的アプローチ ............................................. 16 第 5 節 クリエイティブ産業としての特性 ..................................... 19 小括 ....................................................................... 26 第 2 章 放送事業の特性と市場変化 ............................................. 28 はじめに ................................................................... 28 第 1 節 放送事業の財の特性と民放、NHK の市場................................ 28 第 2 節 民放を取り巻く市場変化 ............................................. 34 第 3 節 変化への対応 ....................................................... 38 小括 ....................................................................... 40 第 3 章 番組制作体制 ......................................................... 41 はじめに ................................................................... 41 第 1 節 職能別階層組織としての民放 ......................................... 41 第 2 節 制作会社との関係 ................................................... 44 第 3 節 リスク分担と契約 ................................................... 46 第 4 節 コアコンピテンスの維持と外部委託 ................................... 47 第 5 節 映像コンテンツの最小制作単位 ....................................... 49 第 6 節 番組制作の基本ユニット ............................................. 50 第 7 節 多様なプロフェッショナルとの協業 ................................... 54 第 8 節 NHK の番組制作体制 ................................................. 56 第 9 節 制作費と番組内容への影響 ........................................... 59 小括 ....................................................................... 61 第 4 章 番組制作人材の育成 ................................................... 62 はじめに ................................................................... 62 第 1 節 テレビ制作者のキャリア比較 ......................................... 62 第 2 節 民放の事例~情報番組制作者 ......................................... 70 第 3 節 NHK 出身者の事例~ドキュメンタリー番組制作者 ....................... 73 第 4 節 民放と NHK の人材育成の違い~ローテーションと専門特化 ............... 75 第 5 節 局員が制作指揮する意義 ............................................. 78 小括 ....................................................................... 83 第 5 章 その他のコンテンツ産業の制作体制と人材育成 ........................... 84 はじめに ................................................................... 84 第 1 節 映画産業~スタジオ・システムからフレキシブルスペシャライゼーションへ 84 第 2 節 動画配信ビジネス ................................................... 87 小括 ....................................................................... 91 結論 ......................................................................... 92 おわりに ..................................................................... 95 参考文献一覧 ................................................................. 98, 主指導教員 : 並河永, text, application/pdf}, school = {埼玉大学}, title = {民間放送とNHKの人材育成比較 : 収益基盤、制作体制、市場変化}, year = {2018}, yomi = {ニトリ, トシユキ} }