@phdthesis{oai:sucra.repo.nii.ac.jp:00019162, author = {楊, 浄}, month = {}, note = {vii, 92p, 改革開放以来、貿易の自由化と直接投資の受入を通じて中国経済は世界経済との一体化を進め、特に2001年のWTO加盟を経て、大きく変貌し、貿易の拡大とともに、その構造も途上国型から新興工業経済群(NIEs)型へと高度化してきた。本論文は欧州委員会が作成した WIOD (World Input-Output Database)を利用して、スカイライン分析などの手法を用いて中国貿易構造の変化及びそれによる日本・アメリカ・EUとその他世界への生産誘発効果に関する実証分析を行うものである。 第1章では、まず産業連関分析の略史の考察を踏まえて、日本と中国における産業連関表の作成及び国際産業連関表の作成状況について述べ、WIOD産業連関表を用いて、2000年から2014年における中国・日本・アメリカ・EUの経済成長及び中国対これらの国・地域の輸入・輸出の構造変化を確認した。当該期間において、USD当期価格表示の国内生産額ベースでの成長率では、中国はこの14年間に平均年率17.7%という驚異的な高成長を遂げ、これに対してEUとアメリカはそれぞれ平均5.6%と3.7%の成長で、日本は為替レートの影響を受け、微小であるが、-0.02%というマイナス成長となった。 中国はこうした飛躍的な生産規模の拡大とともに輸入・輸出額も大幅に増加した。輸入総額は年率換算では平均16.3%の増加で、その内、EU、アメリカとその他世界からの輸入は平均増加率よりも高く、それぞれ17.8%、17.0%と16.8%で、日本からの輸入の増加率は全体の平均より低いが、それでも平均年率で11.3%である。輸入品対国産品の比率は2000年から2004にかけて上昇傾向であったが、それ以後は減少傾向になった。対各国・地域のシェアをみると、EUからの輸入が2000年の12.6%から20014年の15.0%に上昇し、アメリカからの輸入が6%台で横ばいであるが、日本から輸入のシェアが減少傾向で、13%台から約半分までに減少した。一方、日・米・EUを除くその他の世界からの輸入のシェアが増加傾向で、2011年以降は70%を超えるようになった。産業別で見ると、鉱業と石油石炭製品はその他の世界からの輸入シェアが高く9割、8割以上となっており、電気機器、モーターとトレーラー製造業及びその他の製造業は日米からの輸入シェアが減少、代わりにEUからの輸入シェアが増加傾向である。 輸出については、全体の輸出平均増加率17.2%に対して、対EUの輸出は16.8%の増加、対アメリカの輸出は14.6%の増加、対日本の輸出は11.2%の増加で、いずれも平均増加率より低く、これらの国・地域以外への輸出の増加が大きい。対日・米のシェアが減少し、EUのシェアが横ばいである。輸入と同様に日・米・EUを除くその他の世界への輸出シェアが2000年の49.6%から2014年の63.5%まで上昇した。 第2章では、本論文に利用するスカイライン分析に対して、伝統的なスカイライン分析、新スカイライン分析及び本論文の提唱する非競争輸入型モデルによる新スカイライン分析について、それぞれの理論モデルを整理・提示した。スカイライン分析はレオンチェフ(1963)によって考案され、輸出と輸入の誘発効果を含めた産業構造と貿易構造を視覚的に表現する優れた分析ツールとして愛用されてきた。伝統的なスカイライン分析には輸入外生型モデルを使用するが、宮川(2005)は他国から部品を輸入し、組み立てた製品を輸出するという貿易の実態を明らかにするために、輸入内生化モデルも加え、新たなスカイラインチャートの作成を提案し、横幅を従来の国内生産額の構成比から国内最終需要誘発生産額の構成比に変え、さらに輸出入による誘発分の細分化を工夫した。本論文ではレオンチェフのスカイライン分析を伝統的なスカイライン、宮川提案のスカイラインを新スカイラインと呼ぶ。 輸入内生型モデルを用いることによって、新スカイライン分析モデルでは「輸入財を用いて輸出財の生産を行う」といった生産形態をスカイラインチャート上で示すことができるようになったという点で優れている。しかしながら、輸入内生型モデルに使用する競争輸入型産業連関表では、輸入の使用に関する詳細な情報がないため、各産業の輸入は国内需要(中間需要+国内最終需要)の大きさに依存することを仮定し、つまり、暗黙に中間需要と最終需要のうち輸入品の占める割合が同一であるという仮定している。加工貿易の場合、輸出品を生産するために、輸入中間財が多く使われることがよくある。このために、輸出の誘発分を輸入に対する分と国内生産に対する分を区別し、さらに国内最終需要によって誘発される輸入分と輸出によって誘発される輸入分を区別して扱う必要がある。この意味では、国産品と輸入品をそれぞれ中間需要と最終需要の別々に記録する非競争輸入型産業連関表は貿易構造の分析には非常に有効である。しかし、非競争輸入型産業連関表の作成が実務上非常に困難のため、日本など少数の国を除けば世界中ほとんどの国では作成されておらず、中国もこれまで非競争輸入表が公式に発表されていない。スカイライン分析は伝統的に競争輸入型産業連関表を使用することになってきた。WIODに各国の非競争輸入型産業連関表も公表されているため、本論文では中国の産業・貿易構造をより明確に表現するために、新たに非競争輸入型モデルによる新スカイライン分析を提示した。 第3章では、まず、WIODの中国2014年産業連関表を数値例として、3つのスカイラインチャートを比較し、そこから本論文の提案する非競争輸入型モデルの新スカイライン分析が最も中国加工貿易の実態を反映し、産業貿易構造分析により良い分析手法であることを示した。とくに中国の競争輸入型スカイラインチャートと非競争輸入型スカイラインチャートの比較から、競争輸入型スカイライン分析における、各産業の生産物に対するすべての中間需要と最終需要のうち輸入品の占める割合が同一であるという仮定が適切ではないことを示唆すると同時に、中国の加工貿易が多いという実態を改めて確認することになった。 また、WIOD非競争輸入型産業連関表を使用して、WTO加盟前の2000年、加盟後の2006年、2009年と2014年の非競争輸入型スカイラインチャートを作成し、当該期間の産業・貿易構造の変遷を確認した。2000年のスカイラインチャートと比べ、WTOの加盟後の2006年には各産業の輸出輸入の誘発分が格段に大きくなり、とくに繊維産業と情報通信は輸出による生産誘発が自国の需要を満たすための生産誘発よりも大きく、また、輸出による輸入も大きく増加したことなどが確認できた。 第3章では貿易構造が中国自身の経済・産業構造にもたらす影響について分析したが、第4章では中国の輸出によって各国からの輸入を経由して中国以外の世界(日本、米国、EUとその他の世界の4地域)への生産誘発効果を分析した。まず、分析に利用する多国間産業連関分析モデルを提示した上で、2000年から2014年における中国の輸出によって日・米・EUへの生産誘発の比較分析を行った。中国輸出の誘発総生産額の平均増加率は18.5%で、そのうち、自国への生産誘発増加率は18.6%、EUへの生産誘発増加率16.9%、アメリカへの生産誘発増加率14.2%、日本への生産誘発増加率11.7%で、日・米・EUを除くその他の世界への生産誘発の増加率が最も高く、18.8%である。生産誘発の対国・地域別のシェアで見ると、対日本・アメリカ・EUのへの生産誘発は共通な特徴として2000年から2004年までに増加したが、その後減少傾向となり、アメリカとEUは2014年では2004年の約半分に減少し、日本はさらに三分の一までに減少した。輸出による中国自身への生産誘発のシェアは2007年あたりまで減少傾向であった(つまり、中国以外の国・地域への生産誘発シェアが増加した)が、その後増加傾向が見られ、2008年の世界経済危機後、中国は輸出するために大量の中間財を輸入するという貿易形態に若干の変化が現れたといえる。産業別で見ると、輸出による日本への生産誘発額構成比の大きい産業には化学工業、基礎金属、金属製品、情報通信・電子光学製品、電気機器、モーターとトレーラーなどの産業が挙げられる。アメリカへの生産誘発額構成比の高い産業には紙製品、化学工業、医薬品、その他の運送機械と航空輸送などの産業である。EUへの生産誘発構成比の高い産業は紙製品、化学工業、金属製品、機器装置の製造・修理、モーターとトレーラー製造、その他の運送機器の製造などである。 中国輸出単位当たりの対国・地域への誘発効果を表す生産誘発係数から見ると、EUへの生産誘発係数は2007年までに増加したが、その後減少傾向である。日本は2004年に一番大きい値であったが、その後は減少傾向で、2014年はその4割未満までに減少した。アメリカは2006年が最大で、その後減少傾向、2014年は約半分までに減少した。自国への生産誘発係数は期間を通して基本的に増加傾向である。産業別に見ると、日本への生産誘発係数が大きい産業として、情報通信・電子光学、基礎金属製造と化学工業があり、一方、繊維産業は2001年から2014年に8割以上も減少した。アメリカへの生産誘発係数の大きい産業として、情報通信・電子光学製品、化学工業で、EUへの生産誘発係数の大きい産業として、情報通信・電子光学製品、化学工業などがあげられる。 本論文はWIODを利用して、初めて非競争輸入産業連関表の新スカイライン分析モデルを提案し、中国の加工貿易が多いことを明確にした上に、加工貿易構造が変化する実態を確認した。中国の輸出が輸入経由で他の国・地域への生産誘発効果分析も中国では他の国・地域から部品を輸入し、加工した製品また輸出するという加工貿易が減少しつつあることも確認した。, 目次 ……………………………………………………iv 図表リスト ……………………………………………………v 序論 ……………………………………………………1 第1章 中国対日・米・ EUの経済貿易構造比較 ……………………………………………………3 はじめに ……………………………………………………3 第1節 産業連関分析の略史 ……………………………………………………3 第2節 中・日・米・EUの経済成長と生産構造比較 ……………………………………………………6 第3節 中国対日・米・EUの輸入構造変化 ……………………………………………………13 第4節 中国対日・米・EUの輸出構造変化 ……………………………………………………22 小括 ……………………………………………………29 第2章 スカイライン分析の理論的背景 ……………………………………………………32 はじめに ……………………………………………………32 第1節 スカイライン分析の経緯と先行研究 ……………………………………………………32 第2節 3つのスカイライン分析モデル ……………………………………………………34 小括 ……………………………………………………41 第3章 スカイラインチャートによる中国産業・貿易構造の実証分析 …………………42 はじめに ……………………………………………………42 第1節 中国2014年産業連関表による三つのスカイラインチャートの比較 ……………………………………………………42 第2節 中国2000-14年の産業・貿易構造の変遷 ……………………………………………………45 小括 ……………………………………………………48 第4章 中国の輸出による日・米・EUの生産誘発分析 ……………………………………………………491 はじめに ……………………………………………………49 第1節 多国間分析モデル ……………………………………………………49 第2節 中国の輸出による日・米・EUの生産誘発額比較 ……………………………………………………50 第3節 中国の輸出による日・米・EUの生産誘発係数比較 ……………………………………………………58 小括 ……………………………………………………64 結論 ……………………………………………………67 参考文献一覧 ……………………………………………………72 付録 計算及び図描き用プログラム ……………………………………………………74, 指導教員 : 李潔, text, application/pdf}, school = {埼玉大学}, title = {WIODによる中国対日・米・EUの貿易構造分析}, year = {2020}, yomi = {ヨウ, セイ} }