@phdthesis{oai:sucra.repo.nii.ac.jp:00019603, author = {大塚, 美緒子}, month = {}, note = {179p, 超低炭素社会や省資源社会を目指してクリーンエネルギーの需要が高まる中、筆者はこの解決策の一つとして、温度差を電気に直接変換可能な熱電変換材料に着目している。熱電変換材料の性能は、単位温度差あたりの熱起電力を示すゼーベック係数S[V/K]、抵抗率ρ[Ωm]、熱伝導率κ[W/mK]および絶対温度T[K]を用いた無次元性能指数zT=S2T/(ρκ)を指標に表現でき、Bi は代表的な熱電変換材料・素子として知られている。熱電変換材料のエネルギー変換効率は10 %程と低いため、実用化に向けたより大きなzT を有する熱電変換材料の開発・研究が世界中で行われている。zT 評価は新規熱電変換材料の性能を特定する上で重要となるが、熱測定の難しさから、zT の正確性については言及されることが少なく、評価者や使用する装置によって評価結果にばらつきがあった。そこで、本学位論文では熱電変換材料の性能評価手法に着目し、バルクおよびワイヤー熱電変換材料を用いた測定に基づき、輸送特性を評価するためのモデル提案を行った。  まず、一般的な熱電変換材料の代表としてバルクのBi2Te3 およびBiSb を用いて熱伝導率および熱拡散率の温度依存性を測定し、デバイ比熱モデル(D.S.H.)を作成して、フォノンおよびキャリアの熱伝導率評価を行った。ここでは、測定用のリード線に25μm 直径の細い銅線を用い、真空断熱状態で温度制御を行うことで、サンプルからの熱リークを可能な限り小さくして測定を行った。結果、D.S.H.による解析から得られた比熱の値がDulong-Petit 則と一致したことから、測定値および解析モデルの妥当性を示した。D.S.H.はフェルミエネルギーやバンド構造が不明の物質に対しても適応可能なため、材料開発が盛んな熱電分野には適した評価方法を提案することができた。  一方で、熱測定では詳細な熱リークの影響を把握することが難しく、熱電変換材料の評価は測定環境に大きく依存するという問題点がある。そのため、熱測定を介さずに電気測定のみでzT 評価を行うインピーダンススペクトロスコピー法(IS 法)に着目した。IS 法は熱電変換材料の周波数特性を測定することで無次元量のzT を評価できる、熱電分野では比較的新しいzT 評価手法である。しかし、インピーダンスの周波数特性測定やzT 特定のために必要な難解な解析は熱電分野の研究者にとっては扱いにくく、IS 法は未だ浸透していないzT.評価手法である。そこで、IS 法に基づいて、測定およびzT 特定の計算を可能な限り簡略化した2点IS 法を提案した。ここではバルクBi2Te3 を4端子で測定することで、2点IS法により300~100 K の温度領域でzT 評価を行った。結果、zT 誤差が1 %以内となるような周波数を設定することができ、文献値のゼーベック係数と熱拡散率の値を用いて計算した熱伝導率および比熱の値が同一サンプル同時測定で見積もった値と一致することを確認した。  次に、zT 向上のためのアプローチとして、材料の1次元化によるゼーベック係数の増大を目指した、直径100 nm 以下、長さ1 mm 程度の1 次元量子ビスマスナノワイヤーの作製を試みた。ここでは外径1mm 程度、内径が100 nm 以下の細いガラス管を鋳型(石英ガラステンプレート)にして、ビスマスをガラス中に高温圧入した状態のビスマスワイヤーを作製した。これまで、光ファイバーの作製技術を応用させて鋳型となるナノファイバーが試作されてきたが、意図的に狙った内径を有する石英ガラステンプレートは作製できていなかった。そこで、線引き作業中の石英ファイバーの内径を即時的に観察し、リアルタイムで圧力制御を行うことで、段階的に内径を小さくすることに成功した。結果、内径数μm~60 nm の石英ガラスファイバーを安定して作製することができた。また、2端子測定の際に必要となる研磨作業についても、実験者の技量による差が大きかったが、自動研磨機の導入と回転速度と研磨時間の検討を重ねることで効率的にサンプル作製を行うことが可能となった。  これらの技術を用いて、まずは直径1 μm 程度のビスマスマイクロワイヤーを作製し、2端子法により抵抗率およびゼーベック係数の測定を行った。ここでは、量子効果を除いたサイズ効果のみを検証することを目的とし、ワイヤー境界における平均自由行程の制限が各キャリアにおいて独立して起こることを想定した。結果、電子およびホールがそれぞれ独立した平均自由行程を持つことによって、抵抗率およびゼーベック係数の温度依存性が大きく変化することが示された。2端子測定での結果を基に、直径1.9μm、長さ1.5 mm のビスマスマイクロワイヤーの4端子測定を行った。ここでは、1次元量子ビスマスナノワイヤーでの測定系と条件をそろえるために、集束イオンビームを用いた局所ナノ電極をナノ加工により設置した。20-300 K の温度領域における抵抗率およびゼーベック係数の温度依存性測定結果を基に、散乱因子と平均自由行程の温度依存性を見積もった。結果、温度減少に伴って散乱過程が音響フォノン散乱からイオン化不純物散乱へと遷移する傾向が見られると同時に、低温における平均自由行程の減少が見られた。  以上のように、本研究ではより大きなzT を持つ熱電変換材料を目指して1 次元量子ビスマスナノワイヤーの作製準備を行うと共に、ワイヤー形状のビスマス解析時に考慮すべき課題の抽出を行った。さらに、zT 評価時に正確な測定が難しい熱伝導率の特定を回避したIS 法の改良を行うことで、電気測定のみによる、簡略化したzT 特定方法の提案を行った。これらの研究事項は、それぞれ熱電変換材料に対する作製、解析、測定の分野に該当しており、いずれも熱電変換材料のzT 向上を目指す上で必要不可欠な要素である。本研究では多角的な視点から熱電変換材料に関する研究を進め、作製・測定・解析を通して熱電変換材料の評価を包括的に行った。, 第1 章 序論 I. 研究背景 i) 環境問題と廃熱回収 7 ii) 熱電変換 9 II. 熱電変換材料の性能評価手法とその課題 i) 市販の熱電性能評価装置 11 ii) 同一試料同時測定 13 iii) Harman 法 14 iv) インピーダンススペクトロスコピー法 15 v) 課題 17 III. ワイヤー形状の熱電変換材料特有の輸送特性評価と作製 i) Bi マイクロワイヤーへの着目 18 ii) 一次元量子ビスマスナノワイヤーの作製 19 iii) Bi ナノワイヤーの2 端子測定 20 IV. 本研究の目的と構成 第2 章 バルク熱電変換素子を用いた同一サンプル同時物性測定とキャリア熱伝導率評価 I. キャリア熱伝導率評価モデル i) Wiedemann-Franz の法則 23 ii) Boltzmann 方程式 23 iii) Debye specific heat 法(D.S.H.) 26 II. 物性測定 i) サンプル作製 28 ii) 測定 29 iii) 実験結果 31 ◆ゼーベック係数と抵抗率 ◆熱伝導率と熱拡散率 ◆無次元性能指数zT ◆ホール係数 ◆磁気抵抗 III. 解析 i) Wiedemann-Franz の法則によるキャリア熱伝導率評価 34 ii) Boltzmann 方程式によるキャリア熱伝導率評価 35 iii) Debye specific heat 法(D.S.H.)によるキャリア熱伝導率評価 36 iv) 考察 39 第3 章 インピーダンススペクトロスコピー法を用いた無次元性能指数決定方法 ◆IS 法の歴史 I. IS 法によるzT 評価 i) IS 法の利点と課題 42 ii) IS 法の理解 44 iii) 設定周波数がzT 値に与える影響 45 ◆quasi-AC 法を用いた低周波数帯のインピーダンス測定 II. IS 法を用いたzT 測定例 i) サンプル準備 49 ii) 測定 50 iii) 2 点IS 法 53 ◆2 点IS 法におけるzT 定義式 ◆位相θと周波数ωの関係 ◆Re[Z(ω→0)] とRe[Z(ωlow)]の誤差およびRe[Z(ω→∞)]と Re[Z(ωhigh)]の誤差 ◆zT の誤差δzTduo/zTduo ◆IS 法の流れ iv) 2 点IS 法による室温以下での基本的物性評価(抵抗率・zT・熱伝導率・比熱)61 ◆fhigh の温度依存性◆熱電キャパシタンスCTE ◆100 K 以下のインピーダンス測定 ◆抵抗率およびzT の測定結果 ◆熱伝導率および比熱の見積もり ◆低温におけるIS法成立条件の見直し 第4 章 Bi マイクロワイヤーの熱電物性評価 I. 各キャリアの平均自由行程に着目した計算 i) 計算モデル 71 ◆各キャリアの独立した平均自由行程を仮定した抵抗率 ◆各キャリアの独立した平均自由行程を仮定したゼーベック係数 ii) 計算結果 74 ◆ワイヤー直径の特定 ◆結晶方向の特定 ◆抵抗率,ゼーベック係数の計算結果 II. BiMW の2 端子法による熱電物性温度依存性測定 i) 実験 77 ii) 測定結果 78 III. 各キャリアの平均自由行程の解析結果 ◆キャリア別平均自由行程 ◆平均自由行程比 ◆移動度 79 第5 章 一次元量子BiNW の作製 I. リアルタイム内径制御を目指したナノファイバー作製 i) ナノファイバー作製の課題 84 ii) ナノファイバー作製方法とリアルタイム観察を用いた内径制御方法 85 iii) 圧力変換に伴う石英ファイバー内径サイズの調査 86 iv) 圧力制御 87 II. サンプル研磨 i) 研磨方法 91 ii) 研磨最適条件の探索 98 ◆研磨条件の設定と仕上がり確認方法 ◆電子顕微鏡による観察準備 ◆電子顕微鏡によるBi ナノワイヤー観察手順 ◆最適条件の検討 iii) 電極作製による導通試験 108 III. BiNW の2 端子法による熱電物性温度依存性測定 i) 実験 109 ii) 計算 110 第6 章 今後の課題 I. IS 法を用いた熱電変換材料の性能評価 i)ハーマン法との比較・融合 112 ii) IS 法を用いたBiNW のzT 評価 115 II. 量子効果発現を見据えたBi ワイヤーの輸送特性評価 i) BiMW を用いたホールおよび電子の輸送特性評価 117 ◆電気抵抗率と温度係数 ◆ゼーベック係数 ◆ホール係数 ◆磁気抵抗率 ◆放物バンドを仮定した簡単な解析モデル ◆解析結果 ◆結晶方向の特定 ii) 1 次元量子BiNW の4 端子同時測定と巨大ゼーベック効果の実証 124 第7 章 総括 125, 指導教員 : 長谷川 靖洋 准教授, text, application/pdf}, school = {埼玉大学}, title = {バルクおよびワイヤー熱電変換材料の輸送特性評価手法に関する研究}, year = {2021}, yomi = {オオツカ, ミオコ} }